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最初に憲法を変えるべきは9条ではない、"8章"である。

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憲法第8章に何について書かれているのか。
これを知っている方は、憲法についてしっかり学んでいる方に違いありません。
 
私ですか?
 
…私はもちろん知りませんでした。
そもそもこの本のタイトルを一見した時、
「君は憲法第8”条"を読んだか」と誤読したくらいですから。
 
 
この本の主張を一言で言うと、
これからの日本の政治と経済を抜本的に立て直すために、日本国憲法第8章をまず改憲するべきだ、です。
 
なぜ第8章なのか。そもそも憲法第8章とはなんなのか。
そんな単純な疑問を抱きながら読み進めていくと、
大前研一氏が提唱する、
今の日本の現状とこれからのあるべき日本の姿を目指すための有効的なアイデア
に感銘を受けた自分がいました。
 

憲法8章とは

先に答えを言っちゃうと、
憲法8章は、地方自治に関する章です。
 
短い章なので、引用します。
 

第8章 地方自治

地方自治の本旨の確保〕
第92条地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
地方公共団体の機関〕
第93条地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
地方公共団体の権能〕
第94条地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
〔一の地方公共団体のみに適用される特別法〕
第95条一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j01.html#s8 より引用

 
読んでみていかがでしょうか。
どんなイメージを抱くでしょうか。
 
私は最初一読した際、地方自治の本旨って何なの?
と思いました。
憲法上で、地方自治とは云々〜という記述はなく、この憲法が制定された時にあまり力を入れずに作ったのだなということが読み取れます。
 
まあでも、別に最初に改憲しなくてもいいやん。9条の方が先じゃないの?と思うでしょう。
 
ですが大前氏によると、
地方の衰退の原因、はたまた日本の経済の衰退の原因は、この8章にあるといいます。
どういうことでしょうか。 
 

東京一極集中が進む日本の危機

近年の日本の経済では、東京一極集中が進んでいます。
その一極集中を分散させようと、先日の大阪都構想住民投票があったことも記憶に新しいと思います。
しかし結果的に、都構想は否決されたため、そのシュチュエーションはしばらく変わることがないでしょう。
 
ちなみに近年の日本の経済はというと、アベノミクスはうまくいかず、次の一手が見えていません。
日本の既存の産業は、ほとんどが成熟してしまっています。
そのため、何か新しい急成長する産業が生まれてこない限り、賃上げなどの単なる経済政策では上向きになることはないような状態です。
 
そこで、最近は東京以外の地方の産業を活性化させようと、近年はふるさと納税なる制度を取り入れています。しかし結局は地方の産業を活性化させる抜本的な解決策にはなっていません。
 
では、どうすれば日本の経済を立て直すことができるのでしょうか。
 
大前氏は、ドイツとイタリアの地方自治のあり方を見習えと主張します。
 

連邦国家というあり方

ドイツとイタリアはどのような国家運営をしているのでしょうか。
共通しているのは、幾つかの州からなる連邦国家である、ということです。
 
それぞれの州は、州議会や州憲法、州内閣を有し、立法・司法・行政の三権だけでなく、徴税権まで持っています。
また、一つの州が一つの国家のように運営されています。
そのため、それぞれの州が企業誘致をはじめとする産業政策をも独自で行っています。
結果、州同士が激しい競争を強いられており、それが国全体の産業を活性化させることに成功しています。
 
比べて日本を見てみると、
地方の役所は国からの交付金によって成り立っている一種の中央集権制で国家が運営されています。
そのため、地方が独自で産業を誘致する等の、抜本的な改革を執り行うことは実質的に困難な状態です。
 
そもそも、憲法第8章を読む限り、地方には立法・司法・行政の三権は与えられていないので、国が認めた範囲内でしか仕事ができません。
地方自治というより、地方分権といったほうが正しいです。
このままでは、ドイツやイタリアのような地方が競争し合うような状況は作ることは不可能です。
そこでまず、憲法第8章を作り直すことによって、地方自治のあり方を変えようと大前氏は主張しているのです。
 

ドイツやイタリアの連邦国家という国の形を見習うべき。

例えばドイツ。
州ごとに世界的大企業が点在しています。
フランクフルトにはドイツ銀行
シュトゥットガルトには、ポルシェ、などなど。
 
それぞれの州がメインとなる産業を有しており、それぞれの州の持つ産業が世界と競争しています。
東京に一極集中している日本とは大きな違いです。
 
日本では全てが東京に集中しているため、ある程度の大きい企業に成長するほど、本社が東京に出て行く風潮があります。
 
私の地元である福岡の中でも久留米という都市にはかつて、ブリジストンという企業がありました。
ブリジストンの本社が久留米にあった時代は、その周辺に多くの雇用が生まれており、かなり栄えていた時代があったそうです。
しかし本社が東京に移転した今となっては、その移転と共に当時の面影も薄くなってしまいました。
 
地方を活性化させ、日本の社会と経済の成長を望むのであれば、今こそドイツやイタリアを見習うべきではないでしょうか。
 

大前氏の思考の抽象度の高さに脱帽

大前氏の幅広い知識や知見、そして私なんかより遥か上の抽象度で目の前の物事を捉えている洞察力には毎度脱帽させられます。
こういう本を目の前にすると、背筋を正さずして読まずにはいられません。
 
もっともっと自分の知識と思考を高めていかなければと、
自分を奮い立たせてくれる、そんな一冊でした。