あなたを襲うモラル・ライセンシングの危険性とは。【スタンフォードの自分を変える教室 ver.1】
久々のエントリー。
最近は、ケリー・マクゴニガル教授の著書に感動を覚える日々が続いています。
今回取り上げる本は、約4年前に日本語訳された代表的なベストセラー、
スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル著
です。
昨年文庫化された本で、本の帯によると、約60万部を超えるベストセラーとなっている本だそうです。
なぜ今更ベストセラーの本なの?と思われると思いますが、
人と違う本を読みたいという少しひねくれたところがあるので、「ベストセラー」と冠した本はなんとなく敬遠しがちなのです。(苦笑)
この本に出会うきっかけをくれたのは、同教授の最近の著作、
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』が、私の中のストレスに対する考え方を変えてくれたことが全てでした。
その教科書のおかげで、最近の忙しかったストレスフルな時期を精神的に楽しく乗り越えることができ、この本以外の彼女の著作も目を通したいと思った矢先に、この『スタンフォードの自分を変える教室』に出会いました。
この本は自分の中で非常に示唆の多い内容だったので、
今回から数回にわたって、この本の中で自分の中で絶対モノにしたいエッセンスを取り上げます。
今日は、モラル・ライセンシングについてです。
モラルライセンシングに陥る危険性。
モラル・ライセンシングとは、次のことを指します。
人は何か良いことをすると、いい気分になります。そのせいで、自分の衝動を信用しがちになります。多くの場合、悪いことをしたって構わないと思ってしまうのです。スタンフォードの自分を変える教室 p131より引用
たまたま仕事が捗って、午前中で全ての仕事を終えることができたとき、あなたは大抵の場合、「よくやった私、よく頑張った」と自分を褒めるでしょう。そのあとの午後の仕事も「この調子で頑張ろう」とあなたは考えますが、一度いい気分になったあなたは誘惑に負けやすくなっているので、何かの拍子についつい仕事をサボってしまいます。「午前中頑張ったから、少しくらい他のことをしても大丈夫。」
このような状況に、思い当たりはありませんでしょうか。
自慢じゃありませんが、私にはよくあります。特に大きな仕事を終えた際には、無意識のうちに、他の仕事に手がつけずに、全く関係ないことを始めたりしちゃいます。
そもそも人は、何かをしようとしただけで、そのことをした気になってしまいます。
この本の中で取り上げられている研究では、
被験者が、あるチャリティーにお金を寄付しようと考えただけで、自分のために買い物をしたくなることがわかっています。
確かに、私の個人的な例でいうと、
今週は一日一冊読もうと具体的に読書計画を立てるところまではいいのですが、立てることで一種の充実感を感じてしまうので、一週間経過したあと実際に振り返ってみると、その計画を達成していることはほとんどなく、また不達成に対してあまり気に留めていないことが多々あります。
これも計画を立てるという、本を読む段階の状態を自分の中で考えただけで、本を読んだ気になっているという一つの例かもしれません。
では、そのモラルライセンシングを防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか。
著者は以下の二つの方法を提示します。
『なぜ』頑張っているのか、を考える。
一つ目の方法は、
「なぜ、自分は頑張っているのか」「なぜ、誘惑に負けなかったのか」
を物事を終えることができた際に考える、ということです。
人は、目標に向かって前進すると、遠ざかるような行動をとる生き物だということがシカゴ大学とイェール大学の研究結果で示されています。
つまり、一つの物事が終わった際に、一つ前進した、進歩した、と考えてしまうと、先のモラルライセンシングが発動してしまうのです。
ただこれは、進歩そのものが悪いのではなく、
進歩が私たちに与える『いい気分の影響』が問題だということが注意点です。
では、どのように物事に取り組めば良いのでしょうか。
その一つの気の持ち方、考え方として、
上記の「なぜ、自分は頑張っているのか」特に、『なぜ』を意識した方が良いと著者は考察します。
というのも、なぜを考えることは、その目の前の自分が取り組んでいる物事に対する長期的な目標を考えることになるからです。
目の前の物事を終わらせるという短期的な目標への視線を、長期的な目標に目を向けさせることによって、物事を終わらせた際のいい気分を次の目標への活力へと変換させるのです。
明日も今日選択した行動と同じ行動をする、と意識づける。
もう一つの方法は、
「明日も今日選択した行動と同じ行動をする」
と自分の中で意識することです。
例えば、ダイエット中に目の前に現れた一粒のチョコレートを今日は頑張ったからいいやと食べるとします。すると、明日も同じようにチョコレートを一粒食べないといけないことになります。それを毎日繰り返していく自分を想像すれば、半年後には、、、もう分かりますね。
つまり上記のように考えることは、一つ選択するたびに、その選択が将来にわたってずっと影響を及ぼすことだと認識することになります。
こうすることによって、「明日からちゃんとやればいいや」と言い訳ができなくなります。これは、先延ばしを防ぐ効果も秘めています。
自分は正しいことをしたいと心の底から望む人間なのだという自己認識を持つ。
モラルライセンシングが発動してしまうボトルネックには、
本当の自分は悪いことをしたい、と認識している自分がいることにあります。
何か自分で頑張ったことに対して、ご褒美をあげるということは、つまるところ、
自制心を発揮する=罰則
自分を甘やかすこと=ご褒美
という等式が成り立っていることになります。
こうした認識を変革するためには、
自分は正しいことをしたいと心底から望む人間なのだと感じる必要があります。
そのように自覚することによって、
仮にチャリティにお金を寄付した際にも
いいことをして気分がいいから、ごぼうびに自分にアイスを買ってもいいよね。
と考えるのではなく
いいことをして気分がいいけど、これは心の底から自分のしたいことだから、もっと寄付できるようになろう。
というように次へ次へと進歩のエネルギーが向けられることになるのでしょう。
次回は、自分の「望む力」を生み出す3つの問いについて。
巷でよくある自己啓発本を読むより、ケリー教授の本を読んで実践する方が断然良いと感じます。
というのも、科学的な根拠をはっきりと示した上で、我々がどのように行動していけば、自分の望むような生活や行動をとることができるのかといのを考察しているからです。
文庫で安く手に入るので、まだ未読の方は是非読んで見ることをお勧めします。
次回は、自分の意思力が少なくなってきた時に自分の「望む力」を生み出す3つの問い、についてまとめてみます。